食品科学演習
食品中のアクリルアミド低減法について
About the method of acrylamide in food
Announcement by Kondo Shunsuke
食品科学演習
Introduction.
アクリルアミドは、アスパラギンが還元糖と高温加熱されて、メ イラード反応が起こる際に生じる発がん性物質であり、120 ℃以上の高温加熱した食品中に高濃度で検出されることがある。 2002年に高温加熱加工・調理食品中にアクリルアミドが確認されて以来、 アクリルアミドの生成条件、さまざまな食品中の含有量、 食品からの摂取量推定に関する研究・調査が進められてきた。
その結果、アクリルアミドの主な摂取源となる食品は、フライド ポテト、ポテトチップスなどのばれいしょ加工品、ビスケット、 米菓、朝食用シリアルなどの穀類加工品、コーヒー、麦茶などの 焙煎飲料であることが明らかになった。このようなアクリルアミド の主な摂取源となる食品中のアクリルアミドを低減法を調査することを本演習 の目的とした。
Method of acrylamide in food.
フライドポテト
ブランチング処理を行う
太めにカットすること
適切であれば、フライドポテトを下揚げする
食品中のアクリルアミド低減法
フライドポテト
① ブランチング処理を行う
・調理前に還元糖濃度を低減するため、カットしたばれいしょをブランチングを行う。ブランチング工程の後半において酸性ピロリン酸ナトリウムを添加し、pHを下げることでさらに濃度を下げることができる。
洗浄、ブランチング又は下茹で処理は、調理前にばれいしょの表面から、前駆体であるアスパラギン/還元糖を溶出させることに利用できる。
・アクリルアミド濃度をさらに低減するために、ブランチングの後半においてpHを低くする種々の試薬を添加することも可能である。これらは、フライドポテトの酸性ピロリン酸ナトリウム処理、カルシウム塩やその他の多くの2価及び3価の陽イオン塩による処理、食塩水中でのブランチングといった手法を含む。
② 太めにカットすること
・表面積を減らすことが、アクリルアミド低減措置になりうる。例えば、フライドポテトの場合、ばれいしょをより太くカットすることにより、表面積を減らすことができる。14×14 mmの太さにカットしたポテトは細く(8×8mm)カットしたポテトよりアクリルアミド濃度が低いことが示されており、また、フライの前又は後で細片を除去することにより、フライドポテト又はローストポテト中のアクリルアミド濃度が低減することが示されている。
③もし適切であれば、フライドポテトを下揚げする。
さらに 消費される直前に製品を調理する場合には、フライドポテト中のアクリルアミド濃度を有意に低減するため、あげ始めの油の温度を170〜175℃以下とし、あげ色が黄褐色ではなく黄金色になるように調理すること。フライヤーの加熱能力に応じて、実際の揚げ温度が、上げ始めで140℃、揚げ終わりで160℃のなるように油に投入するばれいしょの量を決めなければならない。ばれいしょを油に加えた後の温度の低下が大きく、長く続くほど、ばれいしょが吸収する油の量が増加し、揚げ終わりの温度が高いと、アクリルアミドが過度に生成する。成形タイプの半加工フライドポテトの製造業者はアクリルアミドの生成を最小限にするために必要な事項と整合した調理方法を商品の包装に表示しなければならない。揚げ調理が成型半加工フライドポテトの包装に表示されている調理方法の一つである場合には、推薦する揚げ温度を175℃より高くしなくてはならない。調理方法には、消費者が少量を調理する際には、調理時間を短くすべきこと、焦げ色を黄金色になるまで調理すべきことも明記すべきである。 一部のオーブン調理用フライドポテトや成形半加工ばれいしょ製品は、冷凍ではなく冷蔵での保存を念頭に製造されている。このような状態での保存は、デンプンから還元糖生成をもたらすアミラーゼの酵素活性が残っていると低温化での糖化が進みうるので、アミラーゼを完全に失活させるため、製品製造時にブランチングを施さなければならない。
ポテトチップス
時間、温度及び加熱装置の設定を最適化する
還元糖の多いばれいしょの加工には、真空フライヤーを用いる
高温瞬間フライの場合には、急速冷却を推奨する
色の濃いチップスを取り除くため、色彩選別を行う
食品中のアクリルアミド低減法
ポテトチップス
① 時間、温度及び加熱装置の設定を最適化する
・黄金色にするため、時間、温度及び加熱装置の設定を最適化する。 ポテトチップス中のアクリルアミド濃度は、熱入力をコントロールすることにより低減できる。
② 還元糖の多いばれいしょの加工には、真空フライヤーを用いる
・還元糖の多いばれいしょの加工には、可能であれば真空フライヤーを用いることを検討する。 真空フライヤーの使用は、還元糖濃度が高い馬鈴薯から製造されるポテトチップスのアクリルアミド濃度を低減できる可能性がある。
③ 高温瞬間フライの場合には、急速冷却を推奨する
・高温瞬間フライされたポテトチップスを急速冷却することも、最終製品のアクリルアミド濃度を低減しうる。
④ 色の濃いチップスを取り除くため、色彩選別を行う。
・色の濃いポテトチップスを除くための製造ライン上での光学選別機の使用はアクリルアミド低減に有効な手段であることが証明されている。 その他、脂肪含有率が少ないポテトチップスを作る際に用いられる、半調理し、遠赤外線加熱や乾燥蒸気で仕上げる方法も、アクリルアミドを低減する可能性がある。
穀類全般
使用する小麦粉の種類を検討する
小麦粉の一部を米粉で代替する
焼きすぎない
食品中のアクリルアミド低減法
穀類全般
① 使用する小麦粉の種類を検討する
・使用する小麦粉の種類を検討する。精製度が高い小麦粉は、全粒粉よりもアスパラギン濃度が有意に少ない。しかしながら、全粒粉の含有量を少なくすれば、最終製品の栄養価は低下するだろう。
② 小麦粉の一部を米粉で代替する
・使用する小麦粉の種類を検討する。精製度が高い小麦粉は、全粒粉よりもアスパラギン濃度が有意に少ない。しかしながら、全粒粉の含有量を少なくすれば、最終製品の栄養価は低下するだろう。
③ 焼きすぎない
・アクリルアミド生成は焼成工程の時間と温度のプロファイルを変更することで低減可能である。特に、アクリルアミドが生成しやすい低水分状態に製品が達した最終段階の温度を下げることで低減可能である。代わりに焼き始めの温度を高くしても、この時点ではアクリルアミドの生成を抑えるのに十分なほどの水分含量があるため、アクリルアミドの有意な増加はもたらさない。注意深くオーブンの温度と時間のプロファイルを調節することはアクリルアミド濃度の低減に有効であろう。これらの原則は、ビスケットのモデルや、発酵を要しないクリスプブレッドにおいて上手く適用されている。
パン
レシピに還元糖の使用を避ける
炭酸カルシウムなどのカルシウム塩の添加
焼成工程の時間-温度プロファイルを調節する
パンの生地の発酵させる時間を長くする
食品中のアクリルアミド低減法
パン
① レシピに還元糖の使用を避ける
② 炭酸カルシウムなどのカルシウム塩の添加
炭酸カルシウムなどのカルシウム塩の添加はアクリルアミド生成を抑制しうる。
③ 焼成工程の時間-温度プロファイルを調節する
すなわち、製品の水分含有量が少なくなる最終段階の温度を低くする。
④ パンの生地の発酵させる時間を長くする。
小麦パン生地の酵母発酵は、遊離アスパラギン濃度を低減する。小麦粉ドウのモデル試験では、2時間の発酵により大部分のアスパラギンが酵母によって利用されることが示されている。発酵時間がより短い場合は効果がより小さく、これはサワードウの場合も同様である。
ビスケット、菓子類
カリウム、ナトリウムを含有する膨張剤などを使用する
ジンジャーブレッド製造においては、果糖をブドウ糖に替える
アスパラギナーゼの添加する
食品中のアクリルアミド低減法
ビスケット類、焼き菓子
① カリウム、ナトリウムを含有する膨張剤などを使用する
・アンモニウムを含む膨張剤を使用している場合は、例えばカリウム、ナトリウムを含有する膨張剤など他の膨張剤に替えることを検討する。
② ジンジャーブレッド製造においては、果糖をブドウ糖に替える
・還元糖の多いばれいしょの加工には、可能であれば真空フライヤーを用いることを検討する。 真空フライヤーの使用は、還元糖濃度が高い馬鈴薯から製造されるポテトチップスのアクリルアミド濃度を低減できる可能性がある。
③ アスパラギナーゼの添加する
・アスパラギナーゼの添加はアスパラギンを低減し、それによりクッキーやクラッカーのようなハードタイプの小麦ドウ製品アクリルアミドが低減することが示されている。
朝食用シリアル
加熱加工段階における還元糖を最小限にする
食品中のアクリルアミド低減法
朝食用シリアル
① 加熱加工段階における還元糖を最小限にする
・例えば、ローストナッツ、ドライフルーツなどの他の材料のアクリルアミド濃度への寄与を検討し、それらがアクリルアミド濃度を大きく増やす可能性がある場合には、その原料が必要かどうかを検討する。
クリスプブレッド
最終的な水分含有量を調整すること
加工温度及びオーブンを通る速度を調整する
食品中のアクリルアミド低減法
クリスプブレッド
① 最終的な水分含有量を調整すること。
② 加工温度及びオーブンを通る速度を調整する
References.
Acknowledgments.
本演習を行うにあたって吉田教授、知久講師にはお忙しい中多くの手厚いご指導をいただき、心から感謝申し上げます。
また食品安全学教室の室員の先輩や同期、後輩の皆さん、そして学校生活の中で関わった多くの方々にも改めて感謝申し上げます。